インタビュー
シリーズ・実像に迫る017『清須会議』(単著)、『図説 明智光秀』(編著)、すずき孔著『マンガで読む 新研究 織田信長』『マンガで読む 信長武将列伝』(監修)など、弊社で多くの書籍を刊行されている柴裕之先生に、最新刊の『図説 豊臣秀吉』について読みどころなどをお聞きいたしました!

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①『図説 豊臣秀吉』の依頼を受けたときの率直な感想をお聞かせください。
織田信長の家臣から天下人へと台頭した秀吉は謎の前半生をもつうえ、前半生以後は数多くの業績があり、なおかつその業績についての評価も見解が分かれることもあって、はたして刊行することができるのか、その気持ちが先にありました。
一方で、ここで秀吉についての書籍をつくることができたら、それは自分はもちろん多くの方に、現在は秀吉がどのように描けているのか、確認する機会になるかと思いましたので、言っていることが矛盾するようですが(?)、『図説 明智光秀』のときより積極的にやってみようという気もありました。
②いろいろと評価がわかれる豊臣秀吉ですが、書くのが難しかったところや、逆に楽しかったところはありましたか?
まずは『図説 明智光秀』のときと同じですが、やはり前半生ではないでしょうか。
生年月日や生まれた場所などはある程度わかるのですが、信長に仕え同時代の史料に登場するまでの秀吉は不明なことばかりでした。
また「唐入り」についても、いろいろ事実はわかっていますが、なぜ起きたのかとなると、見解が分かれることがあり、さらには東アジア世界、いまでいえば国際社会にあたりますが、その動きをも視野に置かなければならないため、はたして書くことができるか、正直不安もありました。
ただ、一方で、改めていまわかっていることを確認し、さらには史料から探っていくと、このようにとらえればよいのではないかということがわかっていき、それに快感を感じているところもありましたが……(笑)。
いずれにせよ、刊行したいまとなっては、執筆することによって多くのことが自分なりにわかっていき、楽しかったという感想しか思いあたりません。
③今回は秀吉の生涯と家臣、秀吉死去後のイメージ形成など話題が豊富かと思いますが、ズバリ本書の読みどころや推しはどこでしょうか?
ズバリすべてです!
実は、今回よくわからないのですが、これまでの書籍と違って(そんなこといいますと戎光祥出版の編集担当者さんにお叱りを受けそうですが……怖々)、有能な今後の研究を担っていく執筆者さんたちのお力を借りたおかげか、いまわかっている秀吉像=最新の秀吉研究の成果を提示することができたという非常に手応えを感じています。
もちろん冷静にみれば、まだまだ明らかになっていることは多くありますので、それを提示することができなかったところは反省すべきですが。いずれにせよ、本文、そしてたくさんの図版・写真を見ていただき、改めて秀吉という大きな存在を知っていただきたいという思いで一杯です。
④柴先生は『図説 明智光秀』・『図説 豊臣秀吉』など織田氏に関連する書籍を刊行されてきましたが、そこで明らかになってきたことや、一方でこれらの書籍を通じて浮き彫りになってきた今後の研究課題などはございますでしょうか?
まずあげられることは、やはりその時代や社会のなかで、信長や秀吉らがどのような人物としてあったのか、これを私は「同時代人像」といっていますが、それがはっきりわかってきたことでしょうか。
そのうえで信長・秀吉が進め実現した国内統合=「天下一統」のあり方、それはこの時代の日本、そしてその社会がどのようにあったかということにもなりますが、それが少しでも明らかになったきたことではないでしょうか。
すでに『徳川家康 境界の領主から天下人へ』(平凡社〈中世から近世へ〉、2017年)で、その先も展望していますが、さらにその実態の解明深化を続けていかなければ、中世から近世への移行期像をとらえていくことができないかと思います。そのために、いま研究課題としているのは、1つは秀吉死後の動静と徳川氏の天下人化をまだ荒削りですのでしっかり把握すること、もう1つは各地を治める戦国から近世初期の領域権力による領国支配の実態解明ですかね。
その一方で、信長・家康が登場前の織田家や松平家のさらなる動向の解明ということにも興味持っています。
⑤今回は秀吉でしたが、今後研究に取り組んでみたい武将などはおりますでしょうか?
『図説 明智光秀』刊行のインタビューの際にも申しましたが、まずは織田期であれば柴田勝家でしょうか。これも言うだけになってしまっていますが……。
また豊臣期であれば、改めて秀吉直臣の豊臣譜代大名に興味がありますが、まだ具体的に史料を蒐集したとか作業をしているわけではないので、具体的な人名をあげるのは差し控えますが。いずれにせよ、取り組んでみたいことはいろいろあります!
⑥最後に読者の皆さまに一言お願いします!
先程も申しましたが、秀吉について現在わかっている基本的な事柄は、この『図説 豊臣秀吉』に反映することができたかと思います。
もちろん、これからわかってくることも多々あるかと思いますので、本書を土台に、研究がさらに進んでいき、また皆さんにさらなる秀吉の実像が提示されていくことを願ってやみません。
いま改めて、秀吉とはどのような人物であったのか、この本を是非ともお読みいただき、知っていただければと思います。よろしくお願い致します。
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柴先生、大変お忙しい中インタビューにご対応くださり誠にありがとうございました!
歴史上でも著名な豊臣秀吉に関する最新の研究成果が詰まった『図説 豊臣秀吉』について、多くの方に手にとっていただきたいお気持ちを強く感じました。オールカラーで読み応え十分ですので、ぜひお読みいただけると幸いです。
インタビュー日時:2020年7月30日
2020-07-31 11:40:45
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帯の「九州を制するのは、俺だ!」が目を引く、シリーズ・実像に迫る018『九州の関ヶ原』。関ヶ原の戦いに連動して九州で起こった武将たちの戦いが面白い!と話題になっています。今回はその著者である光成準治先生にお話をお伺いしました!

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① 『九州の関ヶ原』の企画の依頼を受けたときの率直な印象はどうでしたか?
関ヶ原の戦いの際に全国で展開された戦闘のなかでも、九州で起こった戦闘は、黒田官兵衛の動向を除くと、ほとんど注目されていなかったので、面白そうだと思いました。
② 『九州の関ヶ原』で書くのが楽しかったところ、難しかったところはありますか?
楽しかったところとしては、それぞれの大名の古文書を読んでいくと、彼らの野望や苦悩がひしひしと感じられたところです。逆に難しかったところは、現在確認できる史料に乏しい大名が多かったこと。古文書に書かれている内容がすべて真実とは限らないので、真実を伝えるものか、それとも偽物なのかを判断するところで苦労しました。
③ ②を受けて)ズバリ読み所はどこでしょうか?
これまでの通説では、東軍と西軍に色分けされていた大名が、九州ではそれぞれの思惑で独自の動きをしていたことを、今回の書籍で明らかにすることができました。さらに、関ヶ原での敗戦をうけて、彼らの行動が一変していく様子は、現代人にも通じるところがあると思います。
④ 今後、書いてみたいテーマなどはありますか?
「賤ヶ岳の七本槍」といわれる武将たちのなかで、加藤清正については専論がありますが、その他の武将についても詳しく研究していくと、面白いと思っています。
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光成先生、大変お忙しい中インタビューにお答えくださり誠にありがとうございました!先生もおっしゃっていますが、関ヶ原の戦いに連動して巻き起こった全国各地の戦いの中でも、九州はある意味盲点だったと言えます。そこに光を当て、さらに何人もの武将の思惑や動向がわかりやすくまとまっている本書、「知らなかったけど、面白い。」の読後感をお楽しみください!
インタビュー日:2019年2月8日
2019-02-13 15:57:42
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NHKの大河ドラマ「西郷どん」でも大活躍していたことが記憶に新しい江藤新平ですが、今回はその江藤について、弊社の戎光祥選書ソレイユにて筆をとってくださった大庭裕介先生にインタビューをさせていただきました!
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① 『江藤新平』の企画の依頼を受けたときの率直な印象はいかがでしたか?
お話をいただいた時は、とてもありがたいと思う気持ちと「果たして書けるかなー」という気持ちが半々でした。というのも、これまで司法卿時代の江藤新平しか書いたことがなかったので、それ以前の江藤の事跡についてうまく研究状況などを反映して書けるかなという不安がありました。ただ、毛利敏彦先生の『江藤新平』(中央公論新社、1987年)が刊行されて30年以上経っていることもあり、当時の近代像や江藤新平像も近年の研究で変わってきているところもあったので、それを自分なりに発信できたらという期待もありました。

② 『江藤新平』で書くのが楽しかったところ、難しかったところはありますか?
楽しかったところは全部です(笑)。大学の学部や大学院時代に読んで以降、ずーっと積読状態になっていた本を読み返したり、最新研究にも手を付けることができたので良い勉強の機会にもなりました。そうしたなかでとくに楽しかったところは、やはり司法卿時代の江藤の箇所です。この箇所は、これまで発表した論文を参考にリライトしたのですが、江藤が尊王攘夷思想と法典・司法制度をどのように関連づけて構想していたのかを再整理できたので良かったように思います。逆に難しかった箇所は1章と2章でした。複雑な幕末政治史を再整理してわかりやすく伝えるのに苦心しました。書きながら、こんなに難しい時代に関心を持つ方が多いのはなんでだろうと思ってしまいました(苦笑)。
③ ②を受けて)ズバリ読み所はどこでしょうか?
サブタイトルでも強調したのですが、江藤の政治思想ですね。これは全体を通して言えるのですが、江藤が尊王攘夷にこだわっていたことで西洋近代とは少し色の違った日本の近代化が構想されていったという点です。どうしても高等学校の日本史の授業で、明治維新=近代化=西洋化と教えられてしまう傾向があるので、西洋社会と日本社会が近づいていくように思われがちですが、当時の人たちは必ずしも西洋社会だけを念頭に置いて制度設計していったわけではないということを読み取ってもらえたら、うれしいです。士族反乱に加わるような士族にしろ、大久保利通(おおくぼとしみち)にしろ、江藤にしろ、近代化のコースが複数あったんだよということを暗に伝えたいというのが、この本の裏テーマです。
④『江藤新平』のなかでも江藤のイメージのことが大きな話題となっていますが、実際に ご執筆してみて、江藤の人としての魅力はどのあたりにあると感じましたか?
③のご質問とお答えが重なってしまうのですが、尊王攘夷思想という点で彼の生涯を通して考えると、なかなか頑固というか、頑なな人物だなーという気はしました。そのように江藤を描いたのは自分自身なのですが(笑)。逆にいえば、その頑なさが江藤の原動力であることは間違いないのですが。そうした確固たるものがどこかにあるから、明治維新当初は行動を共にする部分があった大久保利通とも対立したり、政府を離れた後に士族反乱に身を投じたりするのだと思います。江藤を頑なな人物だと考えると、毛利先生の『江藤新平』と重なる部分もあって、毛利先生も決して江藤を調整役として描かないんですね。ただ、僕は毛利先生のあの本の終わり方が、学生時代から少し納得いかないところがありました。毛利先生のなかで確固たる意志を持った江藤が、なんで佐賀の乱に「巻き込まれた」という終わり方なんだろうと思っていました。この本では「近代対反近代」というような図式を取り払って考えたこともあり、毛利先生の本を読んで感じていた違和感を自分のなかで少し解決できたのかなと思っています。ぜひいろいろな江藤像を読み比べてみてください。
⑤今後、書いてみたい人物やテーマなどはありますか?
12月に『江藤新平』が出たことを考えると、なかなか難しい質問ですね(笑)。以前に論文で触れた経緯から「大木喬任(おおきたかとう)とか良いじゃん」と周りから茶化されますが、大木喬任は、副島種臣(そえじまたねおみ)をして「天才」と言わしめただけあって古典籍・漢文・西洋法の知識がないと、彼の残した膨大な史料は読み込めないので、僕ではいつまで経っても書けないような気がします(笑)。個人的には、この本でも触れた佐佐木高行(ささきたかゆき)をいつかは機会があればとは思っています。一般の方にはあまり馴染みがない人物ですが、岩倉使節団に随行しながらも、明治10年に入ると、伊藤博文(いとうひろぶみ)たちの考える西洋的な立憲君主制には同意せずに、元田永孚(もとだながざね)たちと天皇親政運動に取り組んだりします。西洋を見ながらも、西洋化一辺倒の近代化と距離をとるという意味では、江藤とも近い要素があるように思います。あと、佐佐木は保守政治家・保守主義者としても知られているわけですが、最近といっても2年ほど前になりますが、宇野重規先生が『保守主義とは何か』(中央公論新社、2016年)という本を出されたこともあって、保守政治の在り方にも多くの人の関心が向けられています。そうしたなかで佐佐木を通して、最近の変質している保守政党や保守政治というものを再考できるのかなと考えています。ただ、佐佐木は79歳まで生きるので、まとめることが大変そうですが、あくまで希望ということでお願いします。
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大庭先生、大変お忙しい中インタビューにお答えくださり誠にありがとうございました!明治維新=近代化=西洋化というわけではないこと、近代化には複数のコースがあったというお話など、大変興味深く拝聴させていただきました。先生のおっしゃる通り幕末は非常に複雑な時代ですが、だからこそキラリと輝き高い志を持った志士たちが数多く生まれたのだと改めて強く感じました。
インタビュー日:2019年1月21日
2019-01-23 14:23:08
メディアでも多数紹介され、刊行記念トークショーは満員御礼、多方面から注目されている真鍋先生と“戦国江戸湾の海賊”。真鍋淳哉先生に、「天気がいいから火を付けてこい」でお馴染み、シリーズ・実像に迫る016『戦国江戸湾の海賊―北条水軍VS里見水軍』のお話を伺いました!
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① 『戦国江戸湾の海賊』の企画の依頼を受けたときの率直な印象はいかがでしたか?
以前に、北条氏の水軍関係の論文を何本か書いたことがあり、それをご覧になられて企画していただいたのでしょうが、まずとにかく、「それは面白いですね!」というのが第一印象でした。戦国時代の江戸湾の実態や、当時の「海賊衆」の存在形態は、どう考えても「面白い」と思っておりましたので、それをみなさんに知っていただける機会を頂戴したことを大変うれしく感じたのをよく覚えています。
② 『戦国江戸湾の海賊』で書くのが楽しかったところ、難しかったところはありますか?
こうしたテーマを以前に扱った際には、いわゆる「古文書」を中心に論じましたので、正直なところ、あまり「歩く」という作業をしてきませんでした。でも今回は、写真収集も兼ねて、横浜市域などを歩いてみたところ、案外身近な地域に「海賊伝承」が残っていることに気付かされ、とても興味深く感じました。お寺などでお話を伺ううちに、思いもしなかった情報を教えていただくような機会もあり、とても楽しく、貴重な経験をさせていただきました。横浜市鶴見区にある松蔭寺の前住職にお話を伺った際、私の中学校・高校の大先輩であったことがわかり、それをひとつのきっかけに、色々な情報を教えていただき、とてもありがたかったです。難しかった点は、里見氏の水軍関係です。北条氏の場合と異なり、まとまった史料が残されておらず、全体像がなかなか掴みにくいところがありました。
③ ②を受けて)ズバリ読み所はどこでしょうか?
「読み所」はたくさんあるのですが、強いて挙げれば、まずは戦国時代の「海賊」の性格ですね。一般的なイメージである、「不法勢力」とは決して言えない点を感じ取っていただければと思います。ただ、戦国大名の家臣というと、城下町に集住させられ、地元から切り離された「鉢植え」的存在と思われがちですが、北条氏の水軍の将梶原氏のように、明らかな「傭兵」で、「こんな給料でやってられるかい!いいよ、本国へ帰りますよ!」と、戦国大名を脅すような「家臣」もいたという部分に注目していただければと思います。二つ目は、海賊の脅威にさらされる「庶民」の姿です。海賊衆に対して、大名が「風がなく、波が穏やかな日には、対岸に渡って、向こうで火つけてまわってこい!」と物騒な指示を出すなか、江戸湾岸の村々やそこを拠点とした流通商人たちは、日常的に危機状態にあったわけです。でも、現代でもそうでしょうが、庶民とは案外したたかなものです。彼らが、大名権力と駆け引きをしながら、こうした危機を回避するためにどう対処していたのか、そこの部分をぜひ読み取っていただきたいと思います。
④「海賊」というと不法者や野蛮なイメージを抱きがちですが、日本中世の「海賊」は実際どのような存在だったのでしょうか?
難しい質問ですが、とにかく、近代の海軍のように、系統が一本化された、直属の組織ではなかったということです。北条氏の場合、「海賊衆」のトップには、生え抜きの水上領主や、梶原氏のような「傭兵的」な海賊がいました。その下には、日常的には漁業や流通業を営みながら、戦時には「水軍」として機能した「海民(かいみん)」がいるという、きわめて混成的要素の強い存在だったのが実態だと思います。その意味からいえば、戦国期の「海賊」、特に末端部分は、軍事専門業者ではなかったといえるでしょうね。それと、これはヨーロッパでもそうでしょうが、「海賊」は必ず一定のルールに則って行動し、自らが権益を持っている海域を無断で航行するなど、相手が「不法行為」を行った場合のみ、制裁として略奪などを行っています。それはある意味、「合法的行為」なのです。「海賊」というと、「パイレーツ」のイメージがあるかもしれませんが、日本の前近代の場合、私は「バイキング」に近いのではないかと思っています。
⑤今後、書いてみたいテーマなどはありますか?
私は、根が「雅」なものですから(真顔。キリっ!)、戦国大名の文芸などの教養、またそうした面を通じた、朝廷や幕府といった京都世界との交流を扱ってみたいです。「海賊」とはまったくかけ離れているかもしれませんが(笑)。足軽・雑兵ならいざ知らず、大名にとって、和歌のひとつも詠めず、『源氏物語』の「桐壷」も読んだことがないなどというのは、大名たる資格なしというのが当時の状況だったと思います。それはなぜかという部分、さらに言えば、当時の文芸は決して遊びなどではなく、戦国大名や武将たちにとって、交流を図るための重要な「武器」だったと思っています。以前に戎光祥出版さんで出版させていただいた『三浦道寸』で触れていますが、道寸自筆の可能性が高い「古筆切」を縁あって入手しました。そうした史料も交えながら、こうしたテーマを取り扱ってみたいです。

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真鍋先生、大変お忙しい中インタビューにお答えくださり誠にありがとうございます!先生のお話は的確かつユーモアがあり聞き入ってしまいます。天気がいい日は火を付けに行ったり、大名を脅す家臣がいたり、戦国江戸湾の海賊のお話はいつ聞いても面白く大変興味深いです。今後機会がありましたら、ぜひ真鍋先生にも戎光祥ヒストリカルセミナーで講師としてご登壇いただければと思います。
インタビュー日時:2018年12月25日
2018-12-27 11:17:13
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『マンガで読む 新研究 織田信長』の監修者、シリーズ・実像に迫る017『清須会議』の著者である柴裕之先生に、最新刊『図説 明智光秀』のインタビューをさせていただきました!
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『図説 明智光秀』の依頼を受けたときの率直な印象はいかがでしたか?
光秀は前半生が不明な人なので、うまく編集できるのか心配でした。後半生では、とくに本能寺の変について、諸説あるなかでどうまとめることができるのか、不安でした。しかし、史料を丹念に追うことで、これまで光の当たらなかった新しい光秀像が描けるのではないかという期待もありました。

さまざまな評価がされる明智光秀ですが、書くのが難しかったところや、逆に楽しかったところはありましたか?
難しかったのはやはり前半生ですね。具体的には、そもそもどこの出身なのか、いつ生まれたのか、どういう身分の人なのかといった基本的なこともわからない人物なので、それをどう書いたらよいのかというところです。楽しかったというか、深めることができたのは丹波攻めです。本書では光秀の人生のなかで丹波攻めをメインで取り上げ、そこを掘り下げることができたのがよかったです。先ほど述べた光があまり当たっていなかった場面かと思います。また、光秀が担った役割というのが、光秀の人生を追うことでよりはっきりと見えてきたのではないかと思います。具体的には、「天下」の周縁を担っていた重鎮ということがわかってきました。
ズバリ本書の読みどころや推しはどこでしょうか?
史料にもとづいて、光秀の現在わかっている事績をまとめてみたことが何よりも重要だと思います。そして、それを補完するような、たくさんの図版を見ていただきたいですね。光秀本人だけではなく、一族や家臣も取り上げていることも大事ですし、後世、光秀がどのように評価されたのか、描かれていったのかを取り上げていることも読みどころですね。光秀を知りたいという方には、まずこの本を手にとっていただきたいという思いです。

柴先生は『マンガで読む 新研究 織田信長』『清須会議』『図説 明智光秀』で監修やご執筆をされており、信長・光秀、さらには本能寺の変後のことまでご研究を進めております。そこでみえてきた信長像、光秀像、または今後研究したいテーマなどはありますか?
信長については、『マンガで読む 新研究 織田信長』でも明らかになってきたように、同時代人としての像がはっきりわかってきたのではないかなと。光秀はまだまだわからないことが多いのですが、これまでと違って、謀反人とか常識人というレッテルを外した像が少しずつ浮かんできたのではないかなと思います。そうしたレッテルをはがした実像に迫る第一歩が『図説 明智光秀』だと感じております。今後は、『清須会議』を書いたことで構想が膨らんできた豊臣期の織田氏や、豊臣政権の中で主家だった織田氏がどのように位置づけられていったのかを研究したいですね。とくにキーパーソンになる信雄を中心に。また、織田氏の研究の成果をふまえたうえで、秀吉自身についても調べていきたいですね。
今回は明智光秀でしたが、信長家臣団には個性的で魅力的な人物がたくさんいます。光秀以外に好きな人物や思い入れのある人物はいますか?
『清須会議』で少し書いた柴田勝家ですね。清須会議後の「織田体制」を維持しようとしていたところに興味があります。あるいは、見直したい人物としては佐久間信盛ですね。一般的に能力の無い宿老として描かれていますが、大きな軍団を任されたり、信盛が本気で信長に諫言すると信長も思い直したりしています。はたして本当に能力の無いダメな人物なのか、もう一度考えてみたいなと思います。
最期に読者の皆さまに一言お願いします!
光秀について、現在わかっている基本的な事柄は、すべて『図説 明智光秀』に書きましたので、光秀を知りたい方はぜひお手にとっていただきたいですね。さらに、今後、光秀に関する史料が発見されていくと思うので、本書を土台に、研究がさらに進むことを願っております。それを踏まえて、改めて光秀の実像に迫ることができればと感じています。ぜひ、この本をお読みいただき、光秀が主人公になるという2020年の大河ドラマの予習をしていただければと思います。

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柴先生、大変お忙しい中インタビューにご対応くださり誠にありがとうございました!再来年の2020年にはNHKの大河ドラマ「麒麟がくる」が予定されており、ゆかりの地を中心に全国各地で盛り上がりを見せています。すでに参拝客や観光客が増えてきているとのことですので、ゆかりの地めぐり等の予定がある方は今から動いておくとお目当てのものをゆっくり見ることができると思います。その際はぜひ柴先生のご著書である『図説 明智光秀』をお供にお連れください!
インタビュー日時:2018年12月21日
2018-12-25 13:49:56
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「室町時代の専門書の副読本にピッタリ!」「複雑だと思っていた組織、制度、戦乱が項目立てて説明されていてわかりやすい!」といったお声を多くの方からいただいている『図説 室町幕府』。ありそうでなかった本・こんな本が欲しかったということで、発売直後に即重版が決まったほどでした…!今回は、本書の著者でもあり、弊社の編集長でもある丸山裕之氏にインタビューをさせていただきました!

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『図説 室町幕府』を執筆されるきっかけは何だったのでしょうか?
2017年に、室町幕府の将軍全15代と幕府で活躍した兄弟たちを取り上げた榎原雅治・清水克行編『室町幕府将軍列伝』を刊行したのですが、同書の企画・編集を進めるなかで、「この本で室町幕府の将軍についてはよくわかるようになるけど、そもそも室町幕府ってどういう政権・組織だったんだろう?そういえば、室町幕府をわかりやすく解説した本はなかったな」と思ったのが、最初のきっかけです。
そして近年、呉座勇一先生の『応仁の乱』や亀田俊和先生の『観応の擾乱』、峰岸純夫先生の『享徳の乱』など、室町時代の戦乱を扱った一般書が多数刊行され、一種の〝室町ブーム〟が起こりつつありますが、それらの書籍をより深く理解するためのツールがあったらいいなと考え、執筆に踏み切りました。
執筆されるうえで、意識した所やこだわった所はどのあたりでしょうか?
最初は室町幕府の通史を書こうかなとも考えたのですが、大枠の歴史については、各出版社から刊行されている室町時代の通史ですでに書かれているので、あえて書く必要はないのかなと思いました。そこで、何か特色を出したいなと考えたところ、それまでも用語や概念が難しくて理解できないという感想が耳に入っていましたし、室町幕府の機構・役職や政策を個別に解説したらわかりやすくなるのではないかと思い、項目別に執筆することに決めました。
また、そもそもが地味な時代、地味な幕府なので、文章をメインにしてしまうと取っつきづらいだろうなと考え、「図説」というスタイルを取ることにしました。それも、ただ写真を並べるだけだとつまらないと思い、文章はくどくならないよう要領よくまとめることにし、フローチャートや概念図を多用することで、視覚的にもわかりやすくなるよう意識しています。イラストやセリフにもこだわりました。
実際に『図説 室町幕府』を執筆されてみて、書くのが楽しかったところ、逆に難しかったところはありましたか?
項目別にまとめることに決まったので、まずはどの項目を取り上げるのか、取捨選択をするのに苦労しました。実際に、本当は他にも取り上げたい項目はあったのですが、あまりマニアックにするのもどうかなと思いますし、ページ数の都合で泣く泣くカットした項目もあります。
逆に、編集者が執筆するということで、「こんな写真や図版を掲載したらよりわかりやすくなるのではないか」とか「読者の方に驚いてもらえるのではないか」と考えながら執筆できたのは楽しかったですね。そして、書き進めるなかで新たな発見もたくさんありましたので、私としてもとても勉強になりました。
新たな発見があったと言われましたが、書く前と後とで、室町幕府に対する認識が変わったところはありましたか?
そうですね。室町時代は比較的平和な時代だったとイメージされることが多いと思うのですが、こと幕府に限っては全然そんなことはないなと。他の時代の幕府と比べても、とにかく内乱や政争が多い。とくに鎌倉公方や明応の政変で将軍家が二つに分裂した後など、将軍の一族同士で戦争しているというのは室町幕府だけの特徴なんだと実感しました。しかも、頻発する内乱や政争と、政策や政治体制とが密接にリンクしているなと。そこで、当初は考えていなかったのですが、途中で急遽、第3部として「幕府を揺るがした合戦・政争」という項目を立て、第1部の「幕府を支える人びと」や第2部の「基本となった政策・制度」と相互補完できるかたちにしました。そのあたりも本書の読みどころのひとつですね。
200年以上続いた室町幕府ということで、登場人物がたくさん出てきますが、1番好きな人物は誰でしょうか?
『室町幕府将軍列伝』では8代将軍足利義政を執筆させていただいたのですが、実は義政の父である6代将軍足利義教が好きです。青蓮院に入って天台座主という宗教界のトップに立った後、兄の義持が後継者を決めずに死去したことから急遽くじ引きで将軍就任が決まり、さらに最後は嘉吉の乱で家臣に殺害されるという波瀾万丈な一生もさることながら、独裁者のイメージが強いながらも、それは実際には彼の理想の高さの裏返しという部分にも惹かれます。
ちなみに余談ですが、幕府ではなく室町時代という括りで考えると、『康富記』という日記を残した朝廷の下級官人の中原康富という人物が1番好きですね。いずれ中原康富の伝記を書いてみたいなとも思いますが、さすがにGOサインは出ないでしょうね(笑)
最後に、読者の方に一言お願いします!
ご購入いただいた皆さま、そして本書をお読みいただいた皆さま、誠にありがとうございます。ネット上の反応等を見ましても、「わかりやすい」ですとか「便利」だという感想がたくさん上がっており、嬉しく思っています。本当にありがとうございました。
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編集長、お忙しい中インタビューにお答えいただき本当にありがとうございました!
本書の内容とも関わりのあるセミナー(戎光祥ヒストリカルセミナーvol.5「鎌倉府と東国の動乱」)を来年の1/19(土)に新宿にて開催いたします。すでにお席の半分以上が埋まっておりますので、興味をお持ちくださった方はお早めにお申し込みください!駒見敬祐先生、植田真平先生、石橋一展先生をお招きし、鎌倉府と東国の動乱について解説していただきます。関東に拠点が置かれた鎌倉府、そして巻き起こった数々の動乱!京都の室町幕府とはいかなる関係にあったのか!?今回は3つの動乱(上杉禅秀の乱・永享の乱・結城合戦)を取り上げ、最新の研究成果から鎌倉府の特質・魅力に迫ります。
インタビュー日:2018年10月24日
2018-10-25 09:55:21
すずき孔先生の最新刊、『マンガで読む 新研究 織田信長』の監修を担当された柴裕之先生(近刊『清須会議』の著者)にも、監修をされた感想をインタビューをさせていただきました!なかなか表には出てこない監修の裏話などが盛りだくさんです。

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今回、すずき孔先生に企画を依頼するにあたり、すずき先生から第一線で織田信長研究をしている先生に監修をお願いしたいということになり、柴先生に監修をお願いさせていただきました。柴先生のもとにお話があったときの印象はどうでしたか?
正直、そのような依頼をいただくとは思っていなかったので、「なぜ私に?本当に私でいいのだろうか?」とびっくりしました。また、私が監修者を務めて、どこまで信長像を提示することができるのだろうか、という思いがよこぎったのも正直な感想です。
依頼がきたときにびっくりされたとのことですが、実際に監修をされるうえで、不安や期待などはどうでしたか?
実は、監修をさせていただくこと自体が初めての経験だったので、そのあたりが不安でした。また、自分は研究者という立場ですし、マンガ家のすずき先生と、どういう風にコミュニケーションを取ったらいいのか、多少心配でした。とはいえ、すずき先生とはそれまでに何回もお会いしており、他の作品も拝読していて熱心な方であることはわかっていましたので、楽しみでもありました。そして、近年大幅に研究が進んだ信長像を初めてマンガというかたちで刊行することになるので、とてもやりがいのある仕事だなと思いました。
今回の企画は、すずき先生と柴先生の間で密に連絡をとっていただいたことにより実現できたものかと思いますが、完成に向けての楽しさや苦労などはいかがでしょうか?
実は、苦労は全然ありませんでした。『清須会議』とは違って(笑)
実際、すずき先生が最新の研究を深く読みこんで質問してきてくださったので、すずき先生の熱心さにとても刺激を受けました。ですので、コミュニケーションの問題はあっという間に解決し、一緒に作品を作っていく楽しみを感じ、自分としても、最新の研究を見直す良いきっかけになったかなと思います。
すずき先生からラフや原稿が上がってきたときの感想はいかがでしたか?また、最新の研究成果がマンガとつながり、広がっていくことについて、どのような印象をお持ちですか?
まず、最初に上がってきた原稿を拝読させていただいたときに、「これは画期的なマンガだな」と感じました。そして、研究は研究であって、たとえ新書の類いであっても読者とは遠い関係にあったのが、マンガを通して身近なものとなっていくのはとても大事なことだと思いました。今回、そのような経験をさせていただいたのは、自分にとってとても大きなことでした。今後は、一般の読者の方とのコミュニケーションのツールにしたいと考えています。
これまで、織田信長についてはマンガでさまざまなかたちで描かれてきましたが、本書はこれまでのマンガとは一線を画したものになっているかと思います。そこで、本書の画期的なところなどはどこになりますでしょうか?あわせて、本書の読みどころも教えてください。
セリフや勢力図など、細かい点にもこだわっており、歴史学者が描いている最新の信長像を、すずき先生が描き切ってくれました。実際に、新しい内容を次々に盛り込んでくれて、私としても興味が尽きることはありませんでした。今回のマンガでは、後世にイメージされた信長ではなく、同時代に生きている信長像が出せたと考えています。具体的な内容としては、信長が朝廷・宗教・諸大名とどのような関係を結ぼうとしたのか、はたして、これまでのイメージのように秩序の破壊者だったのだろうか?そのあたりを念頭に置きながらお読みいただければ幸いです。
ズバリ、柴先生にとって織田信長の魅力はなんでしょうか?
戦国時代の中で、信長はあるべき姿を求めた人だと思っています。そして、自分が理想と思っていることについては、他人も理想だと思っている。だから、自分についてこれない人は蹴落とされていってしまう。私はこうした、当時の概念の中での信長の理想の高さに惹かれています。
近年、たくさんの信長像を見直す書籍が出ていますが、柴先生が考える、今後の織田信長 研究の進展・展望について教えてください。
革新的なイメージで考えられてきた信長が、近年は保守的なイメージをされることが多くなってきています。ただし、ひとくくりに「保守的」と考えるのではなく、戦国時代に生きた人物として、信長自身の実態を捉えていきたいと考えています。同時に、信長の下で働いている武将たちはどうだったのか、彼らの政策がどうだったのかを考えていくことで、信長像を相対化できるのかなとも考えています。
今回は織田信長の監修をお願いさせていただきましたが、次にやるとしたら、どのようなテーマがおもしろそうですか?
信長の家臣は秀吉や柴田勝家などをはじめとして個性的な人が多いので、おもしろいのではないでしょうか。信長の下で働いている武将たちはどういう人物だったのか、彼らの政策はどのようなものだったのか等を考えていくことで、逆に新たな信長像が見えてくるのではないでしょうか。
最後に、本書の読者に向けて、一言お願いします!
画期的な、意義深いマンガだと、心の底から思います。同時代の中での信長を描いたものであり、自分が携わってなくても絶対に購入したと言い切れる、素晴らしい作品になりました。これまでとは違う信長が描かれていますので、ぜひお手に取ってお読みいただきたい。また、一般の読者のみではなく、研究者の方にも読んでいただきたいですね。
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柴先生、お忙しい中インタビューにお答えいただき本当にありがとうございました!
「同時代の中での信長」が描かれたマンガということで、本書を読めば子どもから大人まで誰もが楽しみながら最新の研究成果に触れることができます。まさに柴先生がおっしゃる通り、画期的なマンガに仕上がっています!柴先生は本書の監修だけでなく、近刊『清須会議』もご執筆されており、戎光祥ヒストリカルセミナーvol.2(2018年9月15日開催@神田※当日の飛び込み参加も大歓迎)の講師も務められる大注目の先生です!!

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インタビュー日:2018年8月31日
2018-09-13 11:06:10
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弊社からマンガで読むシリーズとして、『マンガで読む 真田三代』や『マンガで読む 井伊直政とその一族』、『マンガで読む 徳川武将列伝』を刊行されているすずき孔先生。史実に忠実に基づいた歴史をマンガで楽しむことができると、子どもから大人まで、非常に幅広い層の歴史ファンから支持されています。
そんなすずき先生の近刊、『マンガで読む 新研究 織田信長』についてインタビューをさせていただきました!!

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今回、弊社の方から織田信長を題材に描いていただけないかと依頼させていただきましたが、依頼をうけたときの率直な感想はいかがでしたか?
私はもともと徳川家臣団に興味をもってそこからスタートしたので、尾張については徳川とのつながり以上の知識や興味はありませんでした。また、今までマイナーな人物の伝記ばかり描いてきたので、こんな超メジャーな人物を書くことになろうとは思いもせず、「信長の伝記マンガなんて巷にあふれかえっているのになぜ私が今さら?」というのが率直な感想です。ただ、以前愛知県小牧市の依頼で信長の少年~小牧山城時代の伝記マンガを描いたことがあり、若い頃の信長のことはある程度頭に入っていたので、その続編を書くような感覚で入れました。他の武将よりはとっつきやすかったです。
第一線で織田信長研究をしている先生に監修をお願いしたいということになり、柴裕之先生に監修をお願いすることになりましたが、不安や期待などはありましたか?
前記のような理由で、今回は絶対自分の力だけで描くことは無理だとわかっていました。資料を読む時間は限られている中、信長には熱心なファンもたくさんおられますし、下手なものを描いたら大恥をかくことになりかねないと…。柴先生の徳川関係の著書は拝読したり、講演会をお聞きする機会があり、大変素晴らしい研究をされている方だと存じ上げておりました。ですので、今回監修になっていただいて本当にありがたく思いました。
今回の企画は、すずき先生と柴先生の間で密に連絡をとっていただいたことにより実現できたものかと思いますが、完成に向けての楽しさや苦労などはいかがでしょうか?
柴先生にはお世話になりっぱなしで、私の方は苦労はありませんでした。ネームや原稿見本をお送りすると、だいたいその日の夜か次の日にはすぐにお返事が来て、一つの質問について、その時代背景やなぜそうなったかについて大変詳しくわかりやすい解説まで書いてくださいました。今までいただいたメールの返信だけで一冊本ができるくらいの分量で、これは私の宝物にしたいと思います(笑)。また、ネームも大変細かく見てくださり、こちらが気づかないような言葉遣いの間違い、年号表記の不統一なところまでキチンと直していただきありがたかったです。また、最初私は足利義昭のキャラについてなかなかつかめず「なぜ信長が領地をくれるという申し出があったにも関わらず受けなかったのか」と質問したところ、先生から「足利義昭は大変プライドの高い人物だったので」とお返事をいただき、それで自分の中でキャラが一気に固まったこともありました。
監修の柴先生に、なにか一言ありましたらお願いします。
ひたすらありがとうございましたとしか言えません。
ご自身の研究だけでもお忙しい中、こちらの質問だけでなく、こちらが気づかなかったことについても、わざわざ資料を探してお答えくださり、また一度回答いただいたことも、次の日に新たな史料を探してメールいただいたり、とにかく熱心に向き合ってくださり、毎回感激していました。
これまで、織田信長についてはマンガでさまざまなかたちで描かれてきましたが、本書はこれまでのマンガとは一線を画したものになっているかと思います。とくに力を入れた箇所や注意した点はどのあたりでしょうか?あわせて、本書の読みどころも教えてください。
信長の伝記でテンプレとなっているエピソード…うつけ姿、平手政秀の切腹、位牌に抹香を投げる…そういった「今さら」なものは今回まったく描きませんでした。この本はそういったものを読んだうえで、さらに「今の」信長像はどうなっているのかを知りたい人のために描きました。信長は旬の研究ジャンルで、現在でも次々と諸説が現れる中、より信ぴょう性がある説を選び、信長の数多い業績の中からここだけは知ってほしいという部分をマンガにしました。さらに学習マンガにありがちな歴史事実の羅列を避け、人物の感情の動きも入れつつ、文字数を削りなるべく読みやすくなるように努めました。あと、足利義昭の扱いも今までの学習マンガとはかなり違っているので、そこもご注目いただければと思います。
ズバリ、すずき先生にとって織田信長の魅力はなんでしょうか?
あまりにもいろんな面を持っているので、いまだに「こういう人だ」と断言することができないのですが、魂の純度が高くてバイタリティのある人物だったと思います。生真面目に自分のできることを精一杯、あきらめず腐らずにやっていったら結果として誰にもまねできないことを成し遂げてしまったのかなと描いていて思いました。私は凡人なので、そんな信長についていけない足利義昭の方にも同じくらい魅力を感じてしまいますが…。
今回は織田信長を題材にということでお願いさせていただきましたが、次にやるとしたら、どのようなテーマをやりたいですか?
時代や国は問いませんが、魅力的なのにわかりやすい本がないばかりに知られていない人物、今回のようによく知られた人物でも世間に知られていない部分を紹介するお手伝いができればいいなと思っています。徳川ができたらそれは一番ありがたいですが(笑)。
最後に、本書の読者に向けて、一言お願いします!
この本の信長像はあくまで現在の研究をもとにしたものです。今後さらに研究が進んで全く違った信長像になっていくかもしれません。歴史は本に書かれていることが正解なのではなく、多くの優秀な学者の先生が自分の人生をかけて一所懸命に研究し、その成果を次々に発表し、日々新しくなっていく生きもののようなものだと思って下さったらうれしいです。
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『マンガで読む 新研究 織田信長』は、最新の研究成果が盛り込まれていることはもちろん、すずき先生が描かれる凛々しいルックスの織田信長たちも必見です!!
すずき先生、お忙しい中インタビューにお答えいただき誠にありがとうございました。気が早いですが、次回作も楽しみにしております!
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インタビュー日:2018年9月5日
2018-09-12 10:30:36
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『清須会議 秀吉天下取りへの調略戦』と『マンガで読む 新研究 織田信長』の刊行を控えていらっしゃる、今、最もホットな研究者のひとりである柴裕之先生に、ご著書『清須会議 秀吉天下取りへの調略戦』のインタビューをさせていただきました!!
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『清須会議』の依頼を受けたときの率直な印象はいかがでしたか?
2013年に三谷幸喜さんの映画『清須会議』が公開されるなど、一般の方にもさまざまなかたちでイメージはされていますが、実は清須会議ではどんなことが行われていたのか、あまり明らかになっていなかったので、どれだけ実態が追及できるのか、多少心配でした。しかし、本能寺の変で織田信長が死んだ後、すぐに秀吉が台頭するのはなぜなのか?そもそも、すぐに台頭したのは本当なのか?そのあたりを明らかにしてみたいと思いました。

実際に、『清須会議』を執筆されてみて、書くのが楽しかったところ、逆に難しかったところはありましたか?
まずは難しかったところですが、実は、当日も含めて清須会議に関する同時代史料はほとんどないのです。そのため、限られた史料をどう読み解き、どう実像に迫っていくのかが難しかったです。逆に楽しかったところは、たくさんあります。たとえば、メインキャストの中に織田信雄・信孝という信長の二人の息子が登場します。それまで、二人の性格についてはほとんどイメージが湧かなかったのですが、書き進める中で、母親の血縁の影響が色濃くでた信雄と、功績を楯にする信孝というように、二人の性格がよくわかってきたのが楽しかったです。あとは、信長の描いていた政治構想がはっきり見えてきたところですね。
「信長の描いていた政治構想」というお話も出ましたが、ズバリ、本書の読み所はどのあたりでしょうか?
信長の生前に固まりつつあった政治構想が、本能寺の変での信長の死去という突然のアクシデントで瓦解してしまったわけですが、そのなかで、宿老や息子たちが織田家という組織をどのように維持しようとしたのか、登場人物たちの人間模様がひとつの読み所です。以前、『織田氏一門』という書籍を編集したときに、個性の強い一族だなと思ったのですが、その個性の強さが一番出たのが、清須会議だったのかなと思います。実際にみんなバラバラだったので、よくうまく会議がまとまったなと。正直、ここまで登場人物たちの個性が強いとは思いませんでした(笑)

研究者の方にこんな質問をするのはタブーなのですが、もし信長が本能寺の変で斃れなかったらどうなっていたのでしょうか?先ほどから信長の政治構想のお話が何度か出ておりますので、そのあたりと絡めてぜひ教えてください。
信長はすでに「天下人」の立場を固めており、それを信長→信忠→三法師と、嫡流にどう継承していくかが課題なっていたと思います。また、私は三法師が後継者になることは事前に決まっていたと考えています。そのあたりを考慮することで、本能寺の変でなぜ信忠が討たれたのかも、見えてくるのではないでしょうか。同時に、本能寺の変時に成人していた信忠以外の信長の息子たちが、ほとんど他家に養子に入っている意味も考える必要があるでしょう。ちなみに、信長は天下人織田家の居城として安土城を築城していますが、信長の天下が続いた場合、もしかしたら政権の所在地が京都から安土に移動した可能性もあると考えています。

『清須会議』を書き終えられたばかりではありますが、今後、書籍を執筆してみたいテーマはありますか?
そうですね、信長が「天下人」となるきっかけと〝なってしまった〟三方ヶ原の戦いは書いてみたいですね。信長が「天下人」となっていく過程が、よりわかるようになるのではないかなと。あとは、『清須会議』を書いたことで、織田信雄をもっと深く考えてみたいと思うようになりました。信長の政治構想をぶち壊した明智光秀についても書いてみたいですね。
最後に、本書の読者に向けて、一言お願いします!
生前の信長が、いったいどういうことを考えていたのか、突然のアクシデントに見舞われてしまった織田家がどのように対処していったのか、そして、その中で秀吉がどのように台頭していくのか。清須会議の実像に迫ることで、そのスリリングな政治状況を楽しんでいただければ嬉しいなと思っています。

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柴先生、お忙しい中インタビューにお答えいただき誠にありがとうございました!柴先生はとても熱い方で、お話を聞いていて非常に楽しく勉強になりました。『清須会議 秀吉天下取りへの調略戦』も、先生の熱量が感じられる出来に仕上がっています。皆様、ぜひご期待ください!!
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インタビュー日:2018年8月31日
2018-09-04 11:24:29
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『シリーズ実像に迫る014 上杉謙信』の反響がよかったので、著者の石渡洋平氏に突撃して小話をいただいてまいりました!!!
興味のある方はぜひご一読&この記事を拡散していただけますと大変うれしいです(ง `ω´)ง
【謙信の完璧人間“すぎる”ところに引っかかったのが、執筆のきっかけ】
上杉謙信というと、「義」に厚く、戦争にめっぽう強いなど、カリスマ的な存在といわれてきた。ただ、以前からちょっと〝完璧すぎる〟ところが気になっていた。実際、調べていくと引退騒動を起こしたり、家臣の悪行にキレてしまったり……。意外な姿がみえてきて、いつのまにか夢中で執筆していました。これまでのイメージとギャップがあるので、結論を書くのは少し苦労しましたが…笑
【謙信の好きなところ・こわいなと感じるところ】
これは本文では書けなかったのですが、謙信の一番好きなところは、いつでも〝素直〟なところかな。ほめるときはほめるし、怒るときは怒るし、酒を飲むときはとことん楽しんで飲むし。でも、謙信にみんなの前で「この馬鹿!」といわれたら、かなりへこみそうだけど苦笑
【本書の見どころ・読みどころ!】
本文もですが、とくに上越市観光振興課にご協力いただいた、謙信の本拠・春日山城の写真をみていただきたいですね。きれいな写真をご提供いただいたので、興味を持った方はぜひ春日山城を訪れてみてください。現地に行って、謙信の気持ちになってみるのも楽しいと思います。私も春日山城に登ったことがありますが、城からみえる直江津の街並みや日本海の壮大な景色をみて、感動した思い出があります。
次はどの武将を取り上げようかなと悩んでいますが、読者の声にもできるだけ応えていきたいなと個人的には考えています。
(著者談)
石渡先生、お忙しい中ほんとうにありがとうございました…!先生がどんな想いで本書を執筆されたのか、その気持ちに自然と共感いたしました。また本書を読むことで、イメージがひとり歩きしているのではない、まさに実像に迫ったリアルな謙信を身近に感じることができたような気がします。
謙信の本拠地である春日山城、みなさんもぜひ行ってみてください!「謙信もこの景色を見たのかな」「この道を歩いたのかな」「もしかしてこの場所で家臣に怒鳴ってた?笑」なんて想像をしながら巡るときっと楽しいですね!
次回作に期待しつつ、この辺で終わりにさせていただきます。
読んでくださった謙信好きのみなさま、ありがとうございます!

2018-05-08 17:05:06
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